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ブレイクアウト・ネーションズ [著]ルチル・シャルマ

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2013年04月21日

[ジャンル]社会

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■現地調査から探る各国の成長力

 ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字からとった「BRICs(ブリックス)」。米金融大手ゴールドマン・サックスがそう名づけたのは10年前だった。もちろん4カ国には成長の素質があったが、このキーワードがあったからこそ、新興国投資ブームに火が付き、高成長が実現した。
 そして本書がこれから10年のキーワードとしてあげるのが「ブレイクアウト・ネーションズ」。壁を突破して急成長を続ける国々、という意味である。
 名付け親の著者は米金融大手モルガン・スタンレーの投資担当者だ。パソコン画面とにらみ合っている分析家ではない。この15年間、毎月1週間を新興国のどこかで過ごしてきた現地調査重視派だ。地元政治家の演説を聴き、ビジネスマンの習慣を調べ、地下経済を探ってきた。生データを考慮しながらの国家経済の実力判定は説得力がある。
 たとえば各都市の高級ホテルの宿泊料金を比べる「フォーシーズンズ指数」。著しく高ければ、サービス価格の暴騰が成長を阻害していて、落ちこぼれる可能性が高い。概して資源輸出だのみの国の成績が悪いという。最悪はモスクワとサンパウロだった。
 見えてくるのはBRICsの時代の終わり、そしてチェコや韓国、トルコといった新・新興国が台頭する光景だ。
 かつてアジアの成長のお手本だった日本は、本書で「見習ってはいけない対象」としてしばしば登場する。アジアの成長モデルは今後、韓国に取って代わられるだろうと、耳の痛い分析もある。
 それでも著者が指摘するのは、ブームに乗ってどの国も繁栄する時代ではなくなる、各国の事情で成長がばらつく、だから前へ進むには自らの足で歩く努力がいる、ということだ。
 それは「突破する国」に向けてだけでなく、「仰ぎ見られてきた国」にも発せられたメッセージのようである。
     ◇
 鈴木立哉訳、早川書房・2310円/Ruchir Sharma モルガン・スタンレーの投資担当者。ニューヨーク市在住。

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