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SF JACK [編]日本SF作家クラブ

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年04月21日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■「今」を通して、未来を映し出す

 日本SF作家クラブが、創立50周年を迎えた。星新一、小松左京、筒井康隆といった初期メンバーが「ジャンル」を確立した時代から半世紀以上が過ぎ、SF的な手法は拡散している。映画、アニメ、ゲームなどのメディアでも、当たり前のように使われる。しかし、核心的なSF小説のコミュニティーも健在だ。
 12人のSF作家が書き下ろした本書は「日本のSFの現在」を示す。道具としてSFを使うのではなく、みずからSFの射程を広げ、深めようとする探求心がある作品群。
 そのような志を持ったSFは「“今”のフィルターを通して未来を映す遠見眼鏡」だ。ここで読む限り、目下、SF的想像力の探求の対象となりやすいのは、昨年話題になったiPS細胞をもとにした再生医療などバイオ関連技術、そして、急速に我々の生活を変えつつある情報技術の2方面であるようだ。12篇(へん)中の半数がこれらのいずれか(時には両方)をテーマとしたり、舞台設定の重要な要素として組み込んだりしていた。
 硬軟ある中で万人にお奨(すす)めしやすいものとして、まず「リアリストたち」(山本弘)が印象に残った。ネットが普及した果てに、今の我々のように直接人と会って交流する者「リアリスト」がマイノリティーとなった世界を、自宅から出ずネットのみで生活する「ノーマル」の視点から描く。こういった「倒置」は「今」を逆照射する作用もある。「楽園(パラディスス)」(上田早夕里)は、同じく情報技術を扱い、人の生死について切り込む。SFの思弁的な面が強く出ている。さらに「宇宙縫合」(堀晃)のような、古くからのSFファンがニヤリとする仕掛けを施したハードSFもある。
 なお「50周年」と連動し、早川書房からも、傑作SF短篇を編んだ「日本SF短篇50」が全5巻のシリーズとして刊行中。2013年は、SFの年になるか。
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 角川書店・1890円/日本SF作家クラブは63年創立。本書は50周年記念出版で、作家12人の書き下ろし短編集。

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