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日本の動物観 [著]石田おさむ・濱野佐代子・花園誠・瀬戸口明久

[評者]荒俣宏(作家)

[掲載]2013年04月28日

[ジャンル]人文

表紙画像

■江戸時代も続いていた内臓食

 日本の動物観というと仏教の殺生禁忌やら徳川綱吉の「生類憐みの令」を思い浮かべるが、どうもほんとうは動物を殺し食べた日本史こそ探究すべきだったようだ。
 本書は勇敢にも、雨乞いの儀式に捧げられた犠牲獣の問題、美味な食材として江戸時代にも存続した狩猟獣の内臓を食べる習慣などを考察する。
 内臓食ではカモシカ、ムササビ、ウサギ、クマなどが好まれたが、絶品は草食動物の小腸に詰まっている糞(ふん)であり、「極上のソーセージ」だった。明治期以後の肉食はそうした文化の復活でもあった。
 野生動物やペットの問題も大胆でスリリング。明治以後に野犬狩りや狼(おおかみ)狩りが徹底的に行われた裏に、動物を管理し有用化する西洋の理論や進化論の影響があり、中西悟堂ら都市から郊外に移り住んだ文化人が主導した「野鳥」への愛と保護という新思潮でも、初期には「カスミ網やカモ猟のような伝統狩猟」が鳥との親交の一つとされた点は興味深い。
    ◇
 東京大学出版会・4410円

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