川上未映子「愛の夢とか」書評 気がつけば異様な世界に
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年05月19日
愛の夢とか
著者:川上 未映子
出版社:講談社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784062177993
発売⽇:
サイズ: 20cm/185p
愛の夢とか [著]川上未映子
1作ごとに違う顔を見せてきた芥川賞作家の著者による、初めての短編集。表題作は、主婦の「わたし」が隣から聞こえてきたピアノの音にひかれ、隣家に通い始める。ピアノを通じた2人の主婦の不思議でおかしな交流を描く。「三月の毛糸」は、まもなく子どもが生まれる夫婦が旅先の京都で過ごす静かな一夜。自分たちの町で大きな地震が起きているようだが、詳しいことはわからない。妻が不思議な夢を見て、夫婦は不安に包まれる。ほか5編。どの物語も、主人公たちの生きる世界は小さくてささやか。そのありふれた日常がふいにゆがみ、激しく揺れる。読み進めて気がつけば異様な世界に足を踏み入れている。
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講談社・1470円