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フィリピンBC級戦犯裁判 [著]永井均

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2013年06月09日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■裁かれた日本軍、克明に調査

 フィリピンでの戦争裁判に関する先行研究はほとんどない。本書にはその嚆矢(こうし)としての自負が凝縮されている。
 太平洋戦争下、日本軍は3年余にわたってフィリピンを占領支配したが、その実態はどうだったか。戦後にフィリピンのあるメディアは、日本軍の「集団拷問や集団処刑、略奪、焼き払い、強姦(ごうかん)を経験した後には、フィリピン人は日本人をもはや人間と見ることをやめ、殺すべき相手(略)として見るようになった」と書いた。こういう空気の中で、フィリピン政府は、アメリカからの独立後にBC級裁判を行うことになった。
 マニラの軍事法廷で2年半、73件、151人の被告が非人道的行為の罪で裁かれた。国民の憎悪の中で、法の権威を守ろうとしたフィリピン人弁護人など本書はその細部を克明に調査し記述している。妻子や親族を日本軍に惨殺されたキリノ大統領が、53年に恩赦を決めるその心中の描写など、著者の筆調に歴史を学ぶ人間の原点を見る。
    ◇
 講談社選書メチエ・1890円

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