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ダメをみがく―“女子”の呪いを解く方法 [著]津村記久子・深澤真紀

[評者]赤坂真理(作家)

[掲載]2013年06月16日

[ジャンル]人文

表紙画像

■「降りる」は生きやすさへの鍵

 女性の人生が持つ自然な多様さ。それは経済一点突破主義が折れかけの男性的生き方に対して、本来は、風穴となるべきだった。が、「女子」をめぐるメディアや国策が相互にエスカレートした結果「すべてをできる女性がいちばんえらい!」(今、すべての女性誌はそんなでかなり病んでる)となり、他人の期待に敏感な女性は、それに応えようとして折れている。
 妊娠出産に最も適した時期に求人などすべてを集中させ、そうでなければ市場から閉め出すことを続けながら、少子化が問題であると言うのは、本当は社会がおかしい。
 この本は、現代日本社会の諸問題が、女性の中に端的に出ていることを扱っている。社会の問題は、構造の弱い部分に必然的に出る。だから「女性」なのであり、女性が女性に向けた「女子本」ではない。〈草食男子〉の名付け親・深澤真紀と、派遣やニートを文学に高めた津村記久子の対談。こうしたことを言語化できる著者の2人は、「ダメ」というより、まっとうで等身大であろうとする人たちである。
 現在、「女子力」と言えば「女性が主に外見的魅力で異性を惹(ひ)きつけることで有利な人生を取り付ける力、より具体的には経済的に有利な結婚をする力」。これが、婚活市場などともあいまって一大産業にされた。一方で女性は、横並びで突出しないように張り合う特性を持つ。「自分が有利に」と「周囲から浮かない」の両立はかなりむずかしく、これが女子をややこしくする。そしてこの自己矛盾ゆえに「女子」はこれからも産業に利用されやすいだろう。特性や構造をよく把握したうえでそこから積極的に降りる「ダメ」は、生きやすさへの鍵である。そして2人の言を借りれば、生きやすさへの努力ではなく、工夫。
 繰り返すけれど、これは女性だけの問題ではない。すべての女と男におすすめする。
    ◇
 紀伊国屋書店・1575円/つむら・きくこ 78年生まれ。小説家/ふかさわ・まき 67年生まれ。コラムニスト。

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