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永続敗戦論―戦後日本の核心 [著]白井聡

[評者]水野和夫(日本大学教授・経済学)

[掲載]2013年06月16日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■対米従属を続けたい人だらけ

 書名以上に、本書の内容は刺激的である。読んだあと、顔面に強烈なパンチを見舞われ、あっけなくマットに仰向けに倒れこむ心境になった。こんな読後感は初めてだ。
 本書にいう「永続敗戦」とは、「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる」状況を指す。本書の目的は「永続敗戦」としての「戦後」継続を「認識の上で終わらせること」にある。
 現実には、「永続敗戦」の構造が政官財学、そしてメディアを中心に執拗(しつよう)に維持されている。官邸に陣取る外交アドバイザーが米日関係を「騎士と馬」に擬(なぞら)えていたり、3・11による原発事故に際して日本気象学会のトップがその主体性において屍(しかばね)と化した発言をしたり、財界のトップにいたっては原発の建屋爆発後に「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしい」と言い放っているのは、滑稽でさえあると本書はいう。
 著者は「平和と繁栄の時代」が終わったのだから、それを与件としてしか成立しえない「戦後」も終わったと確信する。9・11によって米国がカール・シュミットのいう「例外状態」に突入したように、小泉総理大臣が北朝鮮を電撃訪問したことで日本も同じ状態に入ったと主張するのだ。「例外状態」とは戦争状態をいうのだから。
 本書は経済学にも重い課題を突きつけている。1956年に経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言したが、この国の「戦後」は続いていたのである。この誤認にバブル崩壊後、政府の目的と化した「成長戦略」が失敗に終わった理由があるといえよう。「永続敗戦」を甘受した結果「世界によって自分が変えられてしまう」ことを断固拒否する著者の姿勢を、評者は断固支持する。そうしないと、TPP参加や沖縄問題などどれも失敗に終わるだろう。
    ◇
 太田出版・1785円/しらい・さとし 77年生まれ。文化学園大学助教(社会思想・政治学)。『未完のレーニン』



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