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歴史哲学への招待―生命パラダイムから考える [著]小林道憲

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2013年06月23日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■科学との共通性が見えてくる

 「歴史的事実」という言葉がある。歴史教科書に記述されていることは、あたかも事実のように私たちは思っている。しかし一方、歴史が物語であることも承知している。ではいったいどのようにして私たちは「事実」をその中から発見したり、出来事の歴史を記述すればよいのだろうか?
 本書は、「出来事と出来事は独立したものではなく、縦横に影響し合い、連動しながら」激変するものであり、「おのずと自己自身を形成していく自己組織系」であるという。その、因果関係に収斂(しゅうれん)させようとしない複雑系の歴史イメージが面白い。この歴史観のなかでは偶然も大きな要因となる。そこから、可能性の「分岐」も考えねばならなくなる。つまり歴史を貫く普遍的な法則はなく決定論もない、となる。歴史の非決定性、予測不可能性、一回性、不可逆性、偶然性の主張が過激だ。量子力学の不確定性原理等の説明を用いながら、その不確定性によって歴史学と科学の共通性が見えてくる。
    ◇
 ミネルヴァ書房・3150円

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