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人口減少社会という希望―コミュニティ経済の生成と地球倫理 [著]広井良典

[評者]水野和夫(日本大学教授・経済学)

[掲載]2013年06月30日

[ジャンル]経済

表紙画像

■比重増すローカルで内的な生

 成長至上主義者は本書を読んで、どう反論するだろうか。これまで幾度となく成長戦略が打ち出されてきたものの「失われた20年」は、なぜかいまだに終わらない。本書が指摘するように、そもそも経済成長が「信仰のようなもの」だったのだと考えれば合点がいく。官僚や財界にやる気があるとかないということに問題があるのではない。
 本書は斬新な「資本主義論」を語る経済書であるばかりでなく哲学書、宗教書であり、科学史、人類史をも扱っており、近年稀(まれ)にみるスケールの大きな書である。そして、現在日本が直面している諸問題が、数撃ちゃ当たる式の経済成長策で解決できるほど生易しいものではないことがよく理解できる。
 同時に、著者が10年以上にわたって構想してきた「定常社会論」構想の集大成版とも位置づけることができる。人類史20万年のなかで、「三つのサイクル」を著者は見いだし、各々(おのおの)のサイクルの前半が「物質文明の拡大期」で人口増加の時代であり、後半は「内的・文化的な発展」期であると同時に人口減少の時代であると結論づけている。
 その後半期に「定常社会」を迎えるのであり、現在は「三度目の定常期」を迎えようとしている。こうした過渡期においては「情報の時代」がいつも生ずるのであって、現在のデジタル革命の先には「『生命/生活(life)』というコンセプトに象徴されるような、ローカルな基盤に根ざした現在充足的な生への志向が比重を増していくだろう」と指摘する。
 グローバル化の先にローカル化を見る著者は「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」を提唱している。本書を読んで強く感ずるのは、政府の成長戦略にはこうした壮大な構想力が決定的に欠けているということである。本書のような視点があれば、人口減少を「希望」だと自信をもって言えるのである。
    ◇
 朝日選書・1470円/ひろい・よしのり 61年生まれ。千葉大学教授。『コミュニティを問いなおす』など。

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