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『グレート・ギャツビー』の世界―ダークブルーの夢 [著]宮脇俊文

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2013年07月07日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■夢追うアメリカの哀しい宿命

 ニューヨークの金持ちたちの華やかな世界。映画で上映中の「華麗なるギャツビー」にはそういう印象がある。しかし小説『グレート・ギャツビー』には、どこかやりきれない暗さがあるのだ。その理由を、本書は明確に指し示してくれる。ミネソタの底冷えする寒さから始まる。「なぜ?」と思いながら引き込まれる。実は語り手であるニックも登場人物のギャツビーも、アメリカ中西部の出身なのである。副題である「ダークブルー」は、彼らが夢を育んだ中西部の夜空のこと。そしてその夢を抱いて大都会に出て行く。そこは金銭的富裕が価値をもつ世界だ。
 小説では、砂ぼこり舞う灰の谷に暮らす自動車修理工が、ブラックホールのように読者を暗黒に吸い込む。デイジーはその場所で夫の愛人をひき殺し、ギャツビーはその修理工に撃ち殺される。
 とめどなく夢を追い続ける。著者はそれをアメリカの宿命だという。その宿命が哀(かな)しく思える切ない本である。
    ◇
 青土社・1680円



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