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天気と気象についてわかっていること いないこと [編著]筆保弘徳・芳村圭

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年07月07日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■「空のカラクリ」に挑む熱意

 天気・気象は、社会的な関心事だ。明日、雨が降るかどうかということはもちろん、台風や集中豪雨がもたらす被害まで、気にせず済ますことはできない。しかし、こと科学的な知識については、中学校理科で止まってしまうことが多い。高校では気象学は地学の一部となり、他の理科諸分野よりも選択されにくいようだ。「空のカラクリを詳しく学べないまま」大人になる人が多いと編者は嘆く。
 本書では、その「空のカラクリ」を解き明かす7人の気象研究者が最先端の知識を報告する。著者の多くが70年代後半生まれ。充実期にさしかかった気鋭の研究者である。
 冒頭の「温帯低気圧の研究」は、日本列島近傍の海洋が「ホットスポット」として大気に熱を伝えることで、地球規模での熱移送に寄与することから説き起こす。温帯低気圧は、天気図で毎日のように見るが、気象学の世界ではまさに旬の話題のようだ。
 続く各章では、台風、集中豪雨、梅雨、竜巻、水循環、天気予報などの最新研究。台風は「地球上で最大最強かつ長寿の渦巻き」で、梅雨前線は5千キロに及ぶ「世界最長の前線」だ。見方を変えると、我々は結構、極端な場所に暮らしていると分かる。日常的体験と地球規模の現象がつながり、ミクロな視点とマクロな視点が交錯することが気象学の醍醐味(だいごみ)かもしれない。
 随所に配された著者らのコラムは気象研究者の現場の息づかいが伝わり秀逸。例えば、台風の雨がどの海域由来のものか突き止めるために、世界ではじめて台風の目の中の水蒸気をサンプリングする「台風の中心でEYEを叫ぶ」など、小じゃれていて、しかし、熱い。気象学の核心のひとつは「熱」であることと関係するのか知らないが、著者らの熱容量は相当である。
 著者らが熱っぽく伝える「空のカラクリ」を心に抱いて空を見上げれば、これまでとは違う景色が見えてくる。
    ◇
 ベレ出版・1785円/ふでやす・ひろのり 横浜国立大学准教授、よしむら・けい 東京大学准教授

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