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ヒトはなぜ太るのか?―そして、どうすればいいか [著]ゲーリー・トーベス

[評者]三浦しをん(作家)

[掲載]2013年07月07日

[ジャンル]科学・生物 医学・福祉

表紙画像

■我々の遺伝子に適したご飯は

 摂取カロリーより消費カロリーが少ないから太る。私たちの多くはそう信じ、肉よりもカロリーの少ない野菜や穀類を食べるよう心がけ、なるべく運動しようとする。
 しかし、長続きしない(少なくとも私は)。摂取カロリーを減らすと空腹でいらいらするし、運動するのは楽ではないからだ。「意志薄弱で怠惰なひとなのね」と周囲から白眼視されているのを感じつつ(被害妄想?)、着々と太っていく。
 だが、「『摂取カロリー>消費カロリー』が肥満と過体重の原因」という言説は、そもそも本当に正しいのか? 実験データや医学界での論争を参照し、生物学的に論考したのが本書だ。
 本書によれば、「摂取カロリーを減らし、運動量を多くしても、体重は減らない」。「やせた状態を維持したり、現在ある余分な脂肪をなくしたりする」のに有効な方法は、「炭水化物と糖類の摂取を避ける」ことしかないらしい。「なんですと!?」と私は叫んだ。ちょうど、おかわりした三杯目のご飯を食べながら本書を読んでいたからだ。
 炭水化物と糖類を避けるかわりに、脂質(肉)や蛋白(たんぱく)質(卵など)なら、いくら食べてもいいとのこと。農耕民族には合わない食事法ではと懸念されるが、人類が穀類を栽培し食べはじめたのは1万2千年前。それ以前の250万年間は狩猟採集生活だったので、我々の遺伝子は穀類摂取に適応していない。そのため、炭水化物を摂(と)るとインスリンが分泌されやすくなる。そしてインスリンは、体脂肪の蓄積を促す物質なのだ。なるほど、説得力がある……。
 とはいえ、炭水化物や糖質の摂取制限については、リスクを指摘する声もあるそうだ。自分に合った健康法を見つけるのはむずかしい。白米(やパスタや芋)をやめるべきか、太りを受け入れるべきか。私はいま、ハムレットなみに苦悩している。
    ◇
 太田喜義訳、メディカルトリビューン・2940円 Gary Taubes 科学、薬学、健康が専門のライター。

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