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深海魚ってどんな魚―驚きの形態から生態、利用 [著]尼岡邦夫

[評者]荒俣宏(作家)

[掲載]2013年07月21日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■大人の世界観、揺さぶる図鑑

 ただの子ども向け学習図鑑と思ってはいけない。これは大人も驚かす本である。
 これまでの深海魚本はピンボケ写真と干物のような標本写真に失望させられたが、博物画に似せた白地の背景に実物標本が見苦しくなく切り抜かれたビジュアルがようやく実現した。透明な頭部と球状の眼(め)を持つ奇魚デメニギスの鮮明な写真は、見るだけで世界観が変わる。
 最新の写真を駆使し、これだけ細かに形態の仕組みや種類識別の手がかりを説明してもらうと、異次元の形態をした生物の心まで読めるような気分になる。
 たとえばチョウチンアンコウの類。極小のオスが巨大なメスに寄生するのは有名だが、眼も鰭(ひれ)も失いイボ同然の姿で一生お世話になる「真性」型もいれば、繁殖期だけ寄生する「一時付着」型、自立が可能な「任意」型もいる。
 発光する種類は、真っ暗な深海で発光器の数や配列を鍵に、異性や仲間と出会う。
 彼らは生物の鑑(かがみ)である。
    ◇
 ブックマン社・3780円

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