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モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん―修復家・岩井希久子の仕事 [著]岩井希久子

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年07月28日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■名画を修復する驚きの「秘法」

 名画を修復する職業があることを、大抵のかたがご存じないのでは? 肝心の修復家が仕事の内容や生活を、発言しないせいもある。もっともわが国では美術館に修復部門が、ほとんど無い。従ってこの道に携わる人は少ない。
 本書の著者はイギリスで技術を学び、モネやゴッホの修復を手がけた。新しい絵画の保存方法も考案した。若い人たちに仕事の魅力を伝えたくて、独自の技法を惜しげもなく披露したという本書は、一般の読者にも興味つきない。
 修復の第一歩は絵の表面の汚れを取ることで、それには唾(つば)を用いる。綿棒や筆の先に唾液(だえき)をつけ、転がしたりなでたりする。また消しゴムも用いる。固形の消しゴムをおろし金でおろし、画面にまいて刷毛(はけ)で払う。のっけから、驚きの「秘法」公開である。
 著者はディズニーアニメのセル画も修復した。剥がれた絵の具の欠片(かけら)を拾い、パズルのピースを埋めるように元に戻した。修復前と後の山下清の絵を見ると、技の凄(すご)さに惘然(ぼうぜん)。
    ◇
 美術出版社・2310円

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