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考えすぎた人―お笑い哲学者列伝 [著]清水義範

[評者]鷲田清一(大谷大学教授・哲学)

[掲載]2013年08月11日

[ジャンル]人文

表紙画像

■「入り口」へ誘う快調な文章擬態

 神託をもとめ「ソクラテスより頭のいい人間はいますか」と訊(たず)ねるところを、「頭の強い人間」と言い損ねたあとの顛末(てんまつ)から、サルトルを被告とする恋愛裁判まで、12名の哲学者の滑稽譚(たん)。「プラトンの対話ヘン」といった駄洒落(だじゃれ)の章題に、講釈あり、インタビューあり、子どもとの対話、合コンの中継ありと、著者の文章擬態は快調だ。
 意味はちんぷんかんぷんだけど人の心をぐいと鷲掴(わしづか)みにするような殺し文句が哲学書にはある。が、相手の顔色もおかまいなしに、論理を一貫させ、すべてを言い切らないと気がすまない、そんな哲学者のふるまいがとんちんかんを生む。言っていることは正しい(みたいだ)けどやっぱり違っているのでは……と、なかなかに痛いところを著者は突いてくる。
 著者は「哲学入門」の門口まで読者を誘う「笑い話」集だと言うけれど(人はこれを「敬して遠ざける」ともいう)、哲学研究者こそ一読しておいたほうがいいかも。
    ◇
 新潮社・1680円

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