書評・最新書評

たそがれ・あやしげ [著]眉村卓

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年08月18日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■人生顧みる時、迷い込む異界

 70年代の傑作ジュブナイル「なぞの転校生」「ねらわれた学園」。21世紀になってからも再刊され読者を得ている「司政官シリーズ」。子ども目線に寄り添ったり、官僚組織の中から壮大なSFを描いたり、著者の作品は常に「視点の置き所」を意識させる。
 本書に収録されている21の短編の語り手たちは、定年や再雇用契約切れ、さらには配偶者との死別などで、これまでの人生を顧みる時期にいる。いわば「たそがれ視点」の体現者たちだ。壮年期には見向きもしなかったであろう日常の隙間に引き寄せられ、幽霊、タイムスリップといった事象に出会いつつも日常に戻ってくる奇妙な味わいの作品群。若者言葉が行きすぎて大幅に言葉が変わった未来に迷い込む「新旧通訳」や、人生のやり直しをテーマにした「やり直しの機会」あたりが、例としては分かりやすいだろうか。しかし、各掌編ごとにそれぞれ視点の妙があり、新たな発見をさせてくれる。また、胸に滲(し)みる。
    ◇
 出版芸術社・1470円

関連記事

ページトップへ戻る