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特派員ルポ―サンダルで歩いたアフリカ大陸 [著]高尾具成

[評者]小野正嗣(作家・明治学院大学准教授)

[掲載]2013年09月01日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■ひとつながりの希望と絶望

 2008年3月、毎日新聞記者の著者は、南アフリカのヨハネスブルクに赴任する。以後4年にわたって、この広大な大陸の10近くの国に足を運んだルポが本書である。
 6月には横浜でアフリカ開発会議が開かれ、この「最後の巨大市場」への経済的な関心は高まるばかりのようだ。だがいま一つそこに暮らす人々の姿が見えてこない。
 本書の良さは、南アフリカであれば、サッカーのW杯をめぐる喧噪(けんそう)、ウガンダであればテロや少年兵など痛ましい問題、ジンバブエであれば大統領選挙での国内対立など、各国が抱える主要トピックを、現地の人々の〈声〉に耳を澄ませながら浮かび上がらせているところだ。
 アフリカには、貧困、エイズ、内戦のイメージがつきまとう。あるいは大自然、野生動物といった紋切り型。むろんそうした現実もある。だがそれが決して〈すべて〉ではないことを、履いていたサンダルがボロボロになるまで著者が聞き歩いてきた人々の〈声〉が物語っている。
 ジンバブエでは報道規制と年率10万%(!)のハイパーインフレに悩まされながら取材を続ける記者魂。マンデラ元大統領を語る言葉はまっすぐな敬意に満ち温かい。
 それにしても著者の〈つながる力〉はすごい。来日したジンバブエ首相に故郷の村に住むその母親の写真を渡し、「お前、いつ行ったんだ!」と感動させる。リビアで内戦を取材中に「3・11」を迎えた著者は、反カダフィ派の義勇兵たちから「日本は必ず立ち上がる」と励まされる。
 ルワンダで大虐殺を経験した生存者を取材した際に著者の脳裏をよぎるのは、長年取材してきた広島の被爆者たちの姿であり言葉である。そしていま著者は被災地・釜石に赴任している。希望は絶望とひとつながりであり、悲しみや怒りや苦悩を経ているから笑いや喜びは尊い。そこにアフリカも日本も違いはない。
    ◇
 岩波書店・2625円/たかお・ともなり 67年生まれ。91年、毎日新聞に入社。08年度ボーン・上田記念国際記者賞。

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