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スバらしきバス [著]平田俊子

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2013年09月08日

[ジャンル]社会

表紙画像

■乗れば開く「非日常への扉」

 公共の乗り物でありながら、徒歩のような気安さを感じさせるバス。電車に乗るよりも敷居は低いが、確実に私たちを運んでくれるバス。通常、人は生活圏の範囲内で必要に応じてバスを利用する。だが平田はときに、いやかなり頻繁に、あえて日常を脱線するためバスに乗るようだ。
 たとえば、目的地とはまったく別方向行きのバスが停(と)まっていても、扉が開くとふらふらと吸い込まれてしまう。「お酒の好きな人が赤ちょうちんの前を素通りできないのに似ている」。とくに好きなのは人の出入り。空のバスに乗客が満たされ、やがていなくなる。「何て寂しく、同時に安らぐ光景だろう」と。
 ふと、日常と非日常の間を淡々と行き交う平田の詩を思う。元来人は、日常生活を精密に認識しているわけではなく、ところどころに空隙(くうげき)がある。平田は、空隙をその姿のままにとらえ記述する詩人である。バスの速度と空間に込められた、非日常への扉を開けてみてほしい。
    ◇
 幻戯書房・2310円

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