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福島と原発―誘致から大震災への五十年 [著]福島民報社編集局

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2013年09月08日

[ジャンル]社会

表紙画像

■地方からの目線にこだわる

 東京電力福島第一原発の事故は、中央集権型国家の宿痾(しゅくあ)だ、というのが本書の率直な読後感である。日本の原子力発電の歴史、その立地の経緯を丹念に辿(たど)りながら、福島県大熊町などの町村が、出稼ぎからの脱却、雇用への期待を軸にしつつ原子力発電所による地域再生の道を模索するプロセスが語られる。
 原発報道については多くの書が編まれたが、本書は福島県の県紙としての視点、地方からの目線にこだわり、さらに中央(国、東電本社)に振り回される立場を堅持している。その力点は原発振興に関わった県知事や県職員、自治体の首長らの声を徹底して集め、整理分析し、そして客観的な記述を貫く点にある。
 昭和から平成にかけて福島原発では数多くのトラブルもあった。が、東電の対応は常に二転三転、その体質を「見過ごした国への県や立地町の不満」は潜在していたとの具体的事例ごとの証言に、本書は用いていないが、「人災」の語がなんどもかぶる。
    ◇
 早稲田大学出版部・2940円



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