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江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし [著]吉田智子

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年09月15日

[ジャンル]文芸 科学・生物

表紙画像

■戦時中は爆弾よけに飼われた

 大抵の人が一度は飼った覚えがあるはずだが、その結末は記憶に無い。ふしぎな「ペット」である。はかない生き物だと思っていたら、寿命は平均15年くらいで、最長寿45年の記録があるという。
 飼い方のコツは、過保護にしない。つまり、水を換えすぎない、エサを与えすぎない。水がきれいすぎると、金魚の赤色が「飛んでしまう」。
 東京本郷の住宅街にある創業350年の、金魚卸問屋七代目女将(おかみ)のお話である。
 加賀藩のお屋敷(東大の場所)に納めていた。殿様の観賞用と毒味用であった。やがて養殖が盛んになり、富裕層から庶民の愛玩物となる。金魚は夏の風物詩として定着する。先の戦争では、金魚を飼っている家には爆弾が落ちない、という流言が東京中に広がったという。生きた金魚は入手がむずかしく、代わりに陶器の玩具が作られた。赤い色は魔よけの意味がある。
 本書には多くの種類がカラー写真で収められている。眺めていると、幼心に還る。
    ◇
 洋泉社・1890円

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