書評・最新書評

無垢の領域 [著]桜木紫乃

[評者]

[掲載]2013年09月22日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 受賞作『ホテルローヤル』が大ヒットした直木賞作家の受賞第1作。抑えきれない「嫉妬」を描いた長編小説。
 ぱっとしない書道家の秋津のもとに、一人の若い女性がやってくる。書の才能を持つ純香は、あまりに純粋で危うい。秋津はそんな純香にひかれてゆく。一方、秋津を経済的に支える妻の伶子は、純香の兄の林原にひかれてゆく。半身不自由の秋津の母がふと見せる正気。淡々とした秋津家の日常はゆがみ、不穏な空気が膨張しきった時、物語は大きく展開してゆく。
 墨絵のように暗く重い空を抱えた北の国は、背徳に手をのばしてしまう弱い人間をも許してくれるような気がする。
    ◇
新潮社・1575円

関連記事

ページトップへ戻る