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銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件 [著]アンドリュー・カウフマン

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年10月13日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■読者の想像力で物語が完成

 銀行強盗が、そこに居合わせた人たちに、お金ではなく「もっとも思い入れのあるもの」を要求する。母が大学卒業時にくれた腕時計、高校時代から使っている電卓、子どもの写真など。それらを奪うことで「魂の51%」が失われ、不思議なことが起こるという。また、魂を自分で回復しないかぎり、命を失うことになるかもしれぬとも。
 各人に襲いかかる「不思議」は様々。語り手の妻は身長が日々縮む。夫が雪だるまになったり、足のタトゥーからライオンが飛びだして追いかけられたり、母親が98体に分裂してしまったり……ユーモアに包まれつつダークでビターなエピソードが続く。
 「魂の回復」に成功する者と悲劇を迎える者の岐路はどこか。様々な深読みが可能だ。2度読めばそれだけで印象が変わる。この奇妙な味わいの作品は、読み手側に多くが委ねられており、想像力をフル回転させてはじめて完成する。読書の喜びの原点ともいえる興奮を味わわせてもらった。
    ◇
 田内志文訳、東京創元社・1260円

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