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「ポラロイド伝説」書評 超天才が生んだ発明群の顛末

評者: 荒俣宏 / 朝⽇新聞掲載:2013年10月20日
ポラロイド伝説 無謀なほどの独創性で世界を魅了する 著者:クリストファー・ボナノス 出版社:実務教育出版 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784788908116
発売⽇:
サイズ: 20cm/279p

ポラロイド伝説―無謀なほどの独創性で世界を魅了する [著]クリストファー・ボナノス

 アップル社のスティーブ・ジョブズが深い尊敬のあまり、アメリカの「国宝」とまで呼んだ科学者兼企業家、あの「ポラロイド・カメラ」を発明したエドウィン・ランドの伝記。営業販売よりも研究開発に精力を注ぐ会社を創業したが、若いころは学籍もないのに大学の研究所に夜中忍び込んで思いつきを実験で確かめたというから超天才だ。ランド最初の成功といえる「偏光板」も、それぞれ方向の異なる偏光シートを自動車の前ガラスとヘッドライトに貼り付け「光のぎらつき」を消す当初設計から飛躍し、これを眼鏡に応用し偏光眼鏡で観(み)るカラー立体映画のシステムまで発明してしまうのだ。ランドの驚くべき発明群が世界をおもしろくした顛末(てんまつ)を一望させる本だが、三色でなく二色ですべての色相を表現できる夢のカラー映写法に憑(つ)かれた話だけは、不十分。もっとも、この発明は目と脳の生理的特質まで活用し、今も理論的によく分からないらしいので、仕方ないか。
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 千葉敏生訳、実務教育出版・1890円