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「曽良旅日記」を読む―もうひとつの『おくのほそ道』 [著]金森敦子

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2013年10月20日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■芭蕉らの旅を楽しく追体験

 本当に江戸時代の旅をしているようで、わくわくする一冊だ。「曽良(そら)旅日記」とは芭蕉の奥州、北陸の旅に同行した弟子、河合曽良の日記のことである。『おくのほそ道』が再構成された文学であるのに対して、同行した曽良は場所、天候、時刻まで詳細に記録した。すでに翻刻され研究書も複数出ているが、旅の研究者による本書は従来のものとは異なり、曽良と芭蕉の旅の体験を、実際に歩きながら確認するような本となった。
 たとえば関所を通る体験とはどういうものなのか、別の旅記録も参照しながら詳細に描く。仙台藩を出るとき、道を変えて歩いたり、関所を通ることが困難だ、と記述している。4、5日で抜けられる旅程を13日も滞在していたことが、関所で不審に思われるからだ。その旅の実際を、著者はミステリー小説を書くように解いてゆく。芭蕉の旅は、やはり通常の旅ではなかった。宿泊した旅籠(はたご)や庄屋の環境も、改めて実感する。専門的だが楽しい本だ。
    ◇
 法政大学出版局・5670円



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