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日本の農業を破壊したのは誰か―「農業立国」に舵を切れ [著]山下一仁

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2013年11月03日

[ジャンル]社会

表紙画像

■農協や農政の甘えの構造指摘

 日本の農業をめぐっては、「誤った常識」を前提に政策が議論されることが多い。「小さい農家は貧乏」「関税がなくなれば農業は壊滅する」「米国や豪州とは規模が違うので競争にならない」のたぐいだ。
 実際は農業収入が少ない兼業農家の方が大きな専業農家より平均所得が高い。野菜や花などは関税がほとんどないが競争力がある。高関税のコメも米カリフォルニア産と国内産の内外価格差は接近しており今の価格でも台湾や香港に輸出されている。本書はデータをふんだんに用いて論理的に“農業ムラ”の不都合な真実を明らかにしていく。
 著者は元農水官僚だが、自由化を主張しつづけてきた筋金入りの改革派だ。最近もTPP賛成論を掲げ、反対派との論争の先頭に立ってきた。
 農協組織や農政の甘えの構造を指摘する著者の舌鋒(ぜっぽう)は鋭く厳しい。ただそれを徹底的に見直せば農業の明るい未来を設計することは十分可能、と目が見開かれる一冊。
    ◇
 講談社・1680円


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