窪美澄「雨のなまえ」書評 大泣きしたい気持ちになる
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年11月10日
雨のなまえ
著者:窪 美澄
出版社:光文社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784334929053
発売⽇:
サイズ: 20cm/226p
雨のなまえ [著]窪美澄
気づけばぐっしょりとぬれている雨。どしゃぶりの雨。五つの短編はどれも雨が降っている。
認知症の義母をみながらスーパーで働く私。恋も性も「永遠に剥奪(はくだつ)された」生活は大学生のバイトが来て変化する。中3の息子と夫の弁当を作りながら、彼との夜を妄想する私。生々しい性愛の描写が、現実の残酷さを浮き彫りにする。妊娠中の妻から父となる自覚を求められ、逃げ出すように浮気に走る男。いじめで命を落とした幼なじみの少女が心にすみついた男性教師。
誰も泣いてはいないのに、ままならない現実と自分勝手な妄想に揺れる彼らを見ていると、大泣きしたい気持ちになる。
◇
光文社・1470円