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雨のなまえ [著]窪美澄

[評者]

[掲載]2013年11月10日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 気づけばぐっしょりとぬれている雨。どしゃぶりの雨。五つの短編はどれも雨が降っている。
 認知症の義母をみながらスーパーで働く私。恋も性も「永遠に剥奪(はくだつ)された」生活は大学生のバイトが来て変化する。中3の息子と夫の弁当を作りながら、彼との夜を妄想する私。生々しい性愛の描写が、現実の残酷さを浮き彫りにする。妊娠中の妻から父となる自覚を求められ、逃げ出すように浮気に走る男。いじめで命を落とした幼なじみの少女が心にすみついた男性教師。
 誰も泣いてはいないのに、ままならない現実と自分勝手な妄想に揺れる彼らを見ていると、大泣きしたい気持ちになる。
    ◇
 光文社・1470円

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