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JB論 ジェイムズ・ブラウン闘論集1959—2007 [編著]ネルソン・ジョージ、アラン・リーズ

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)

[掲載]2013年11月17日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■黒い音楽を変えた男のファンク

 ジェイムズ・ブラウン、米国の“黒い”音楽を変えた男。世界中からJBと親しみをこめて呼ばれるシャウトの達人。彼がでっぷりした腹で踊り出し、爪先(つまさき)で移動し、一瞬にして縦に股割りして元に戻れば観客は必ず絶叫した。
 生前の彼のキャッチフレーズをもっと挙げよう。「リズム&ブルースの王」「ソウルのゴッドファーザー」「業界で一番の働き者」などなど。
 ホーン・セクションを入れたそのバンドは、フェイマス・フレイムズからJBズ、と名前こそ変わるものの、はじめから凄腕(すごうで)ミュージシャンの出入りが激しく、いわば彼らはJBの薫陶を受けては“虎の穴”を出て活躍した。
 また、演奏中に指や声で曲の展開を指示することも有名で、そのきっかけを逃すまいとメンバーはJBの一挙手一投足に集中する。だから当然、集団は規律的になる。遅刻で罰金、演奏ミスで罰金。
 それどころか、出身地南部の習慣からか、メンバーは互いに苗字(みょうじ)で呼びあい、なれなれしさを遠ざけた。
 そうしたJB周辺、またはJBそのものに関して米国の新聞や音楽雑誌に書かれた1959年から2007年までのコラム、評論、インタビューを集めたのが本書だ。
 毀誉褒貶(きよほうへん)あったJBである。例えば、キング牧師暗殺で暴動寸前のアフロアメリカンたちに「家に帰ってテレビを見ろ」と言い、局は事実JBのライブを放送。暴動をまぬがれたと言われる。一方、ショットガンを持って妻の車を穴だらけにしたし、薬物使用で投獄され、大借金も背負った。
 その毀誉褒貶は繰り返し書かれ、JB自身によって語られる。時にはエピソードに変奏が加わり、何が本当で何が嘘(うそ)かわからなくなる。
 だが、その繰り返しが次第にリズミカルなフレーズの、終わらぬ反復に思えてくる。
 ああ、JB。これもあなたのファンク。彼の永遠のしもべである私は、そう読む。
    ◇
 押野素子、佐藤信夫訳、スペースシャワーネットワーク・2940円/Nelson George , Alan Leeds

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