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『アノスミア―わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語』書評 恋人の匂いまで失ってしまう

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2013年11月17日
アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語 著者:モリー・バーンバウム 出版社:勁草書房 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784326750511
発売⽇:
サイズ: 20cm/338p

アノスミア―わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語 [著]モリー・バーンバウム

 アノスミアとは嗅覚(きゅうかく)脱失のこと。シェフを目指していた著者はある日、事故で嗅覚を失う。味もわからなくなるだけでなく、食べ物が腐っていても、火事が起きても気づかないから命の危険さえある。恋人の匂いまで失ってしまうのは悲しい。著者はオリバー・サックスら科学者や香料開発者に取材、同じ病気に悩む人々と出会い、「幻臭」という現象もあることを知る。味覚と嗅覚が密接な関係にあることや、においは人のアイデンティティーに重要な位置にあることがわかる。やがて試行錯誤を繰り返しながら嗅覚を少しずつ取り戻し、調香師学校に入学する。青春物語の体裁を取りながらの嗅覚をめぐる冒険。
    ◇
 ニキリンコ訳、勁草書房・2520円