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ナウシカの飛行具、作ってみた [著]八谷和彦、猪谷千香、あさりよしとお/液体燃料ロケットをDIYしてみた [著]あさりよしとお

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年11月17日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■大空を駆ける「素人」の熱意

 『ナウシカの飛行具、作ってみた』は、映画「風の谷のナウシカ」の軽快な飛行具メーヴェに触発され、実際に人が乗って飛べるものを実現したアーティストの著。10年かけて、構想、設計、製作、さらにテストを繰り返し、航空局の試験飛行許可を得た。そして、飛行場内での小飛行も成し遂げた。プロジェクト名はオープンスカイ。「開け、空!」
 なぜ?という問いに著者は「いつか現れるナウシカのため」と答える。未来に夢を持ちやすかった1960年代生まれとして、まだ見ぬ子どもたちが育つ社会がより良いものであれ、とも。素人が飛行機を造る苦労を語る時ですら、常に突き抜けた開放感を感じさせる筆致に、清々(すがすが)しいメッセージ性を感じる。
 さて60年代前後生まれの世代には、宇宙やロケットに熱中した人が多い。21世紀には誰もが宇宙に行けると信じていた。しかし現実は肩すかし。そこで「誰も連れていってくれないのなら、自分たちで」と当該世代の元少年らが「なつのロケット団」を立ち上げた。『液体燃料ロケットをDIYしてみた』は活動報告。著者は漫画家で最初期からのメンバーだ。他にも小説家、ジャーナリスト、イラストレーター、事業家、エンジニアらが加わりロケットを造る。本気度はネット検索で打ち上げ動画を見れば分かる。
 その上で本書の醍醐味(だいごみ)は「ないものは作ってしまえ」という発想と、次々と現れるハードルを乗り越える熱。エンジンに燃料を通す前の「水流し試験」ではタンクに水を充填(じゅうてん)することにすら苦労し、初期の作業場だった自宅を水浸しにした。ロケット開発にはつきものの燃焼試験の失敗(爆発)も経験し、歴史を追体験しつつ実用ロケットへの道を進む。
 両著に共通するポジティヴに空を見上げる心は、時代の閉塞(へいそく)感と無縁だ。開けた青空(オープンスカイ!)を上昇するロケットの姿を思い描く。
    ◇
 『ナウシカ』幻冬舎・1470円/はちや・かずひこ、いがや・ちか▽『液体燃料』学研・1365円

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