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人類が絶滅する6のシナリオ もはや空想ではない終焉の科学 [著]フレッド・グテル

[評者]萱野稔人(津田塾大学教授・哲学)

[掲載]2013年11月24日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■地球史レベルでみる「私たち」

 人類の絶滅というとどこかSF的な話にしか聞こえないかもしれない。しかし、たとえば1億年後にも人類が生存していると断言できる人はどれぐらいいるだろうか。なにしろ地球に生命が誕生してから40億年、現生の人類であるホモ・サピエンスがあらわれてから数十万年しか経っていないのだ。1億年後には大気中の酸素濃度だって今と同じとはかぎらない。事実、24億年前までは地球上の大気にはほとんど酸素がなかった。
 本書は題名のとおり、その人類が絶滅するシナリオを六つあげて論じている。人類も地球上の生物種の一つである以上、他の生物種と同じようにいつかは絶滅する。ただし本書が描くのは、火山の大爆発や巨大隕石(いんせき)の衝突といった自然のプロセスによって引き起こされる人類の絶滅ではない。そうではなく、人類がみずからの利益のためにしていることが、その意図に反して地球に災厄をもたらし、その結果として引き起こされる人類の絶滅である。食肉の大量生産によって発生のリスクが高まってしまったスーパーウイルスの脅威や、人類が放出する温室効果ガスによって突然引き起こされうる気候変動の危険性など、人類自身がみずからの絶滅を早めてしまうかもしれない要因を論じることがそこでのテーマである。
 人類の絶滅について考えることは、人類とは一体何なのか、私たち人類は実際には何をしているのか、ということを地球史のレベルで考えることにほかならない。24億年前に、光合成によって酸素を放出することで地球上の大気の組成を激変させ、当時存在していた嫌気性の(酸素が毒になる)生物をほとんど絶滅させてしまったシアノバクテリアと、大気の組成を変えてしまうほどの温室効果ガスを放出しつづけている人類は、地球史的にみてどこが違うのだろう。とても読みやすい科学の本だが、投げかける問いはすぐれて哲学的だ。
    ◇
 夏目大訳、河出書房新社・2310円/Fred Guterl 米科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」編集長。

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