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少国民戦争文化史 [著]山中恒

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年12月08日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■消された愚行の実体に迫る

 「少国民」とは、第二次大戦中の呼称で、年少の国民のことである。もったいぶった言い方が戦時用語の特色だけど簡単に言えば、少年少女のこと。昭和十二年十一月、大毎小学生新聞・東日小学生新聞が、「少国民愛国歌」の歌詞を募集した。これが少国民という語の使われた最初である。ただし一般化するのは四年後の太平洋戦争になってから。
 本のタイトルに、『少国民の日本史』『少国民の国体読本』『少国民文化大日本史』と少国民がつく。内務省が指導し文部省や陸軍省他が加わって、児童雑誌の規制が始まる。
 たとえばルビの廃止。ルビは児童の目によくないという論法である。実は漢字や漢語優位の偏向ではなかろうか。少国民などという固い造語から、そう思える。
 かくして昭和十六年に「社団法人・日本少国民文化協会」が、翌年には「財団法人・少国民文化協会(少文協)」が結成される。官民一体の少国民文化運動が発足した。運動の実態は謎の部分が多かった。協会員の作家たちが、戦後、口を閉ざしたからである。語られた事柄も真実か否か、容易に判断できない。
 著者は「ボクラ少国民」シリーズで、これまで少文協の果たした役割を追究してきた。本書はその延長線上にある。昭和十九年以降の少文協の内部事情は、未(いま)だに手がかりがないそうだ。そして恐らく今後この問題は論じられることはあるまい、と言う。どのように「少国民」が作られたか。究明することは重要だ。きなくさくなってきた昨今、同じ愚行が繰り返されない為(ため)にも。
 著者のライフワークに対して、心ない悪口を放つ者もいる。戦時中の本を集め、鋏(はさみ)と糊(のり)でまとめただけだ、と。
 少国民図書の内容を紹介してくれただけで偉業である。戦時中の本は集めようとしても集まらない。愚行の「証拠」は消されたから。私たちは氏の著によって、少国民文化の実体を知ることができる。
    ◇
 勁草書房・3570円/やまなか・ひさし 31年生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。『戦時児童文学論』など。

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