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スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー [著]ゲイリー・シュタインガート

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2013年12月08日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■評価経済の時代の悲恋物語

 冴(さ)えない中年男が、若く美しい女性に恋をした。だが、さまざまな障壁が立ちはだかり、真実の愛を試されて……。などという古典的な設定にそぐわぬ大量の仕掛けが疾走する、異色ラブストーリー。舞台は近未来のアメリカ。経済破綻(はたん)後に独裁政権が軍事化を進め、人々はクレジット評価から性的魅力まで、あらゆる面で数値化されている。誰もが評価の奴隷だ。主人公のレニーは39歳。クレジット評価は悪くないが、性的魅力は最低ランク。彼が一目惚(ぼ)れした24歳のユーニスは、生意気で低クレジット階層だが、とびきり魅力的だった。
 ジェットコースターに乗って交錯する恋愛、経済、メディア、軍事、政治、生命、そして人生の優先順位。恋愛の障壁と世界の障壁が無理やり同期させられていくさまは、本当に「超」悲しい。随所に散らばる評価経済のメタファーは、私たちの日常を執拗(しつよう)に戯画化する。無残すぎてやがておかしい、近未来のロミオとジュリエット。
    ◇
 近藤隆文訳、NHK出版・2415円

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