「知的障害と裁き―ドキュメント千葉東金事件」書評 福祉と司法 顕在化する矛盾
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年12月15日
知的障害と裁き ドキュメント千葉東金事件
著者:佐藤 幹夫
出版社:岩波書店
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784000238793
発売⽇:
サイズ: 20cm/277p
知的障害と裁き―ドキュメント千葉東金事件 [著]佐藤幹夫
2008年に千葉県東金市で起きた女児殺害事件で、軽度の知的障害のある男性が逮捕された。弁護団は当初、無罪主張を掲げるが、主任弁護人が辞任して一転、起訴内容を認める。「知的障害と刑事司法」というテーマを追いかけ、雑誌に同時進行ルポを連載していた著者も振り回される。著者は、当初の主任弁護人の保護的な弁護活動が、被告のプライドを傷つけたことが辞任の遠因とみる。知的障害のある犯罪加害者をどう支えるのか。被告人を「責任を帰することのできる主体」とみるか、「福祉的保護の必要な人」とみるか。当事者と支援者の判断が違ったらどうするのか。福祉と司法の乗り入れが進む中で、顕在化する矛盾に焦点を当てる。
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岩波書店・2835円