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臨時軍事費特別会計―帝国日本を破滅させた魔性の制度 [著]鈴木晟

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2013年12月15日

[ジャンル]歴史 政治

表紙画像

■内訳や実態解明への先導役

 日中戦争開始後に近衛内閣のもとで、「臨時軍事費特別会計法」が公布された。わずか2条のこの法律は、その第1条で「支那事変ニ関スル臨時軍事費ノ会計ハ一般ノ歳入歳出ト区分シ事件ノ終局迄(まで)ヲ一会計年度トシテ(略)」と謳(うた)っていた。ところが昭和史の中でも、この臨時軍事費(臨軍費)の内訳や実態についてはほとんど解明されていない。
 本書は果敢にその部分に挑んでいる。臨軍費についての説明(たとえば決算報告は不要、財源は国民の預金と公債、支出の大半は物件費だったなど)はわかりやすいし、昭和10年代の史実を通して日米の戦費調達の姿が描かれている。とくに昭和の軍部が長期的な戦略を持っていなかったことも窺(うかが)える。
 著者の筆調とは逆になるが、臨軍費から見た史実や軍官僚、大蔵官僚の証言も知りたい。その点で本書は臨軍費研究のどの部分が欠落しているかを明かしたことになり、次の研究書が生まれる先導役を果たしている。
     ◇
 講談社・2100円


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