書評・最新書評

箱根駅伝 青春群像 [著]佐藤三武朗

[評者]水野和夫(日本大学教授・経済学)

[掲載]2013年12月15日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■「日本精神」凝縮した総合芸術

 「箱根駅伝」が、あと3週間足らずでやってくる。たとえ贔屓(ひいき)の大学がなくても、観(み)入ってしまうのはなぜだろう。そんな疑問に明快に答えを出してくれるのが本書だ。
 箱根駅伝に参加しているのは襷(たすき)をつなぐ10人だけではない。背後には監督、部長、部員たち、付き添い、補助役員、救護係、予選で負けた大学の選手がいる。そして警察や数限りないボランティアに支えられて来年で90回という時間の襷もつないできた。
 コースには「上り坂」、「下り坂」に加えて想定外の「魔坂(まさか)」も待ち構えている。展開するドラマに観る側は自分の人生を重ね合わせる。箱根駅伝は「総合力」「組織力」を競うスポーツであると同時に「日本人の精神」を凝縮した「総合芸術」なのだ。 この芸術は、正月の行事として、近年さらに特別な輝きを放っている。それは「失われた20年」で日本の失ったものが、GDP(国内総生産)だけではなかったことを示していると思えてならない。
     ◇
 講談社・1680円


関連記事

ページトップへ戻る