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わたしはマララ―教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女 [著]マララ・ユスフザイ、クリスティーナ・ラム

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2014年01月12日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝 国際

表紙画像

■本とペンこそが私たちの武器

 十六歳の少女の自伝である。侮ってはいけない。自伝は生きてきた年数でなく、体験の重さである。
 少女は十五歳で、イスラム武装勢力タリバンの暗殺の標的となった。下校中のスクールバスにテロリスト二人が乗り込み、「どの子がマララだ?」と聞いた。答える間もなく、マララは左目のわきを銃で撃たれた。隣席の級友二人も撃たれた。マララたちは奇跡的に一命をとりとめた。
 タリバンは、女性が笑い声を上げること、白い靴をはくことを禁じた。教育を受けるのは、もっての外だった。マララは十一歳の時から、パキスタンのラジオやテレビで、彼らの考えは間違っている、と主張した。どうして人間の基本的な権利を奪おうとするのか。私たちからペンや教科書を取りあげても、考える力を奪うことはできない。
 タリバンはマララを暗殺する声明を発した。イスラムに反する考えを民衆に広めようとしているのが理由だった。
 マララは言う。誰だって人生で一度や二度は過ちをおかす。「だいじなのは、そこからなにを学ぶかだ」
 マララは十四歳で国際子ども平和賞の候補にあげられた(二年後受賞)。パキスタンで最初の国民平和賞も受賞した。タリバンは少女が有名人になりすぎるのを危惧した。
 しかし、少女へのテロは、皮肉にも少女を国際的有名人にした。二〇一三年七月十二日は、マララの十六歳の誕生日である。国連はこの日を、マララ・デーと定めた。当日、マララはニューヨークの国連本部でスピーチを行った。本とペンこそが私たちの武器である。一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンが世界を変える。教育こそ解決策と。「どの子がマララだ?」と私たちは咎(とが)められない。安穏な国にいるしあわせを思うべきだろう。本書は五部に分かれている。第三部の銃撃事件から読み、最後に冒頭に戻った方がわかりやすい。
    ◇
 金原瑞人ほか訳、学研パブリッシング・1680円/Malala Yousafzai 97年生まれ。共著者はジャーナリスト。

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