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歌舞伎座五代―木挽町風雲録 [著]石山俊彦

[評者]隈研吾(建築家・東京大学教授)

[掲載]2014年01月12日

[ジャンル]歴史 アート・ファッション・芸能

表紙画像

■国家背負った大劇場の歴史

 まず江戸時代以来、「歌舞伎座」という名の大劇場が、脈々と伝統を継承してきた、という誤解が解かれる。第1代歌舞伎座(明治22年)以前は、小さな芝居小屋たちが盛衰を繰り返していた。
 外国通の人々が、ヨーロッパの首都に聳(そび)えるオペラ座という文化の殿堂を見て、「日本」を発揚するために、国家を背負った大劇場が必要だと感じ、「歌舞伎座」という文化装置を発明した。
 その後の紆余曲折(うよきょくせつ)が楽しい。この庶民的な、軽やかな芝居と、国家、経済との間に横たわるギャップゆえに、緊張、軋轢(あつれき)のドラマが連続し、多様な登場人物が華をそえた。最新の第5代歌舞伎座の設計に携わったこの僕自身が驚いてしまうほどに、この劇場の歴史はスリリングであった。
 しかし、逆に見れば、それだけエキサイティングなエピソードの連続だったからこそ、歌舞伎は緊張感を保ち続け、歌舞伎座は東京の中心として輝くのだと感じた。
    ◇
 岩波書店・2100円

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