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浸透する教養―江戸の出版文化という回路 [編]鈴木健一

[評者]荒俣宏(作家)

[掲載]2014年01月19日

[ジャンル]人文

表紙画像

■庶民も図像で読みこなす

 日本人は難しい話を図像化して理解する、と幕末期に長崎医学伝習所で医学を教えたオランダ海軍軍医ポンペも驚いていた。神道家平田篤胤には2歳の門弟までいたが、絵図を上手に使い分かりやすく古学を教えたとの話も聞く。
 江戸庶民はこぞって教養好きだった。本書によれば、これには識字率の高さと図像読解力を礎にした江戸の出版文化が関係していた。専門的な医学書を和文でやさしく解説した手引書が数千点も出たため、一冊読んで「医者にでもなるか」という藪(やぶ)医者が横行したそうだ。
 一方、外国語、とりわけ漢文は江戸の教養の基本だったが、これを日本語として読む「訓読法」が浸透し、暗誦(あんしょう)しやすいが不規則で「テニヲハ」も省略した奇妙な日本語を産みだした。明治以後の言文一致も単に便宜の問題でなく、不自然極まった漢文体への批判を含んでいた。
 各論題が興味深い内容だけに、主題の通り「易しく」書いてほしかったが。
    ◇
 勉誠出版・7350円



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