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「銀座にはなぜ超高層ビルがないのか」書評 場所の文化、どうやって守るか

評者: 隈研吾 / 朝⽇新聞掲載:2014年01月26日
銀座にはなぜ超高層ビルがないのか まちがつくった地域のルール (平凡社新書) 著者:竹沢 えり子 出版社:平凡社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784582857061
発売⽇:
サイズ: 18cm/239p

銀座にはなぜ超高層ビルがないのか [著]竹沢えり子

 銀座のど真ん中で、つい最近、こんなバトルがあった。大手ディべロッパー対銀座の旦那衆のバトルである。
 実は、その裏に、今日の世界を二分する大きな対立、分裂がひそんでいる。銀座は、一種の代理戦争でもあった。
 一方は、グローバルで、匿名性の高い金融資本主義。彼らが求めるのは、資金回収の容易なシンボリックな超高層。対するは、場所と密着した、顔の見える家業的ネットワークで、中層の街並みの継続を望んだ。
 金融資本主義という巨大な力から、いかに地域の生活や家族を守るかは、われわれ全員の課題でもある。同時に家業が時間をかけて築き上げた場所の文化を利用しない限り、金融資本主義も競争に勝てない、という現代的逆説も見える。
 長いバトルの結果、中層の街並みは守られることになった。チームワークが印象的で、われわれの街でも使える教訓がたくさんある。
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 平凡社新書・840円