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本を愛しすぎた男 本泥棒と古書店探偵と愛書狂 [著]アリソン・フーヴァー・バートレット

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2014年01月26日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■紙の本の利点美点がいっぱい

 一九八八年春、骨董(こっとう)品の大箱を十五ドルで買った郷土史家が、『タマレーン、その他の詩集』と題された小冊子を発見した。作者は「ボストン人」と記されていた。郷土史家はサザビーズのオークションに出品した。それは十九万八千ドルで競売にかけられた。
 一八二七年に出版されたエドガー・アラン・ポーの最初の詩集だったのである。現在までに十四冊しか発見されていない。
 このような掘り出し奇譚(きたん)の好きなかたなら、本書を面白く読むだろう。高価な稀覯(きこう)本を盗みまわる四十代半ばの男の物語だからである。彼が一向に捕まらないのは、転売しないからだ。彼は本を読まない。本に性的魅力を感じて盗み、盗品を並べて眺めて楽しむ。著者はなぜこんな男に執着し、本を書いたのだろう。
 あと味の悪い本なのである。それなのに評者があえて取りあげた理由は、電子書籍の時代なら絶対にありえない内容だからである。紙の本ならではの利点美点が満載なのだ。
    ◇
 築地誠子訳、原書房・2520円

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