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教育委員会―何が問題か [著]新藤宗幸

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2014年02月02日

[ジャンル]教育 社会

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■タテ行政に組み込まれた現実

 教育委員会とその事務局を区別して言葉を使っている人がどれだけいるだろう。メディアでも、本来サポートする側の事務局をそのまま教育委員会と呼ぶ場合が多い。教育行政の核でありながら、我々はその仕組みと実情に無関心ではないかと考えていたところ、本書に出会った。
 戦後「教育行政の一般行政からの分離・独立」のために制度化され、レイマンコントロール(民衆統制)を旨とするが、実際には「タテ行政系列」に組み込まれている現実。議会の承認を要する教育委員は、根回しにより事実上、行政側の思惑通りに決まる。公開が原則の委員会の前に「研究会」などと称し、事務局側の意向を説明する機会が設けられる。事務局はエリート教員の「インナーサークル」であり、トップに立つ教育長は「全国都道府県教育長協議会」などを通じて文科官僚と定期的な会合を持つ。まさに“「民衆統制」を「隠れ蓑(みの)」とした中央から地方教育委員会にいたる事務局支配”。第2次安倍内閣の教育再生実行会議が提言した“首長による教育長任命”も、現状を「あらためて制度化しようとするもの」と皮肉を述べる。
 打開策として、著者は、現行のタテの行政系列の廃止、直接参加民主主義による学校運営を主張する。中央機関は最低限守るべきナショナルミニマムと、実現が望ましいナショナルスタンダードを策定することに専念。一方で、子どもたち、保護者、教員、校長、学区住民などからなる「学校委員会」が、個々の学校、自治体での教育についての決定権を持つ。現行の学校運営協議会を連想する方もいるかもしれないが、こちらは「タテ行政」の中に組み込まれた諮問機関であり、異質だ。
 様々な異論はあろう。しかし、教育委員会制度について、無関心や単なる思いつきレベルではない、制度と実情の理解を伴った議論の呼び水となることを期待する。
    ◇
 岩波新書・798円/しんどう・むねゆき 46年生まれ。千葉大学名誉教授(行政学)。『司法官僚』など。

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