高樹のぶ子「香夜」書評 不思議な鎮魂の物語
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年02月09日
香夜
著者:高樹 のぶ子
出版社:集英社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784087715361
発売⽇:
サイズ: 20cm/253p
香夜 [著]高樹のぶ子
死ぬ前に、決着をつけないといけない相手がいる。たとえ相手が生者ではなくても思いを遂げようとする。それが、この物語の主人公・流奈(るな)。
愛してしまったために、流奈の心と体を傷つけた男との再会。家族の期待を背負いながらすべてを捨てた姉との旅路。人生につまずいた不器用な息子と孫が見せる希望。6歳で死んだ、幼なじみの少女と自分の娘への悔恨の念。連なる四つの幻想譚(たん)。
「決心を実行するときが来た」。最後、病院を抜け出した流奈には、思いがけぬ道行きが待っていた。
「命を運ぶのが、運命」。長年、生と性を描いてきた著者による、不思議な鎮魂の物語だ。
◇
集英社・1575円