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滅亡へのカウントダウン―人口大爆発とわれわれの未来』(上・下) [著]アラン・ワイズマン

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2014年03月02日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝 国際

表紙画像

■「人類が存続できる世界」とは

 いま世界の人口は200年前の7倍の70億人。今世紀中には100億人超となる。食物連鎖の頂点にいる人類はますます生息領域を広げ、地球から資源をしぼり取ろうとしている。だが100億人がハンバーガーを食べられるほど地球の許容量は大きくない。
 前作で「人類なき地球は今よりずっと健康になる」と唱えた著者が、20カ国以上の取材から「人類が存続できる世界」の可能性を探った。人口が野放図にふえれば、食糧や水、エネルギーが足りなくなる。必然的に人口抑制は避けられないという。
 その危惧はもっともだが、耳を貸す為政者はそういないのが現実だ。かつて経済学者マルサスが予測した人口増による食糧危機は、化学肥料などによる穀物生産力の革新的な向上で幸運にも的中しなかった。その成功体験から、人口増にともなう困難は技術革新で乗りきれる、という楽観論を生んでしまったのだ。
 とはいえコメ、小麦など少数穀物への過剰依存は、たった一つの病害で大厄災に見舞われる危うさも抱える。それでも世界がこの難題に向き合えないのは、「人口増なくして成長なし」という成長至上主義の呪縛からだろう。
 ここで紹介される国々も、国力を強くするには人口増が必要と考えている。日本も例外でない。政府もメディアも人口減少は政策的失敗と受け止め、少子化対策に必死だ。
 これに対し本書は、人口減少がはじまった日本を「現実的な転換へと世界を導く最初の国」と肯定的にとらえる。国家的強制でなく個人意思による避妊が重要と考える著者にとって、日本社会は未来に希望を見いだす存在らしい。
 その視点はユニークだが本質をとらえてもいる。本書が示す「地球がまかないきれる範囲で生きられる経済」「量でなく質が改善する文明」という座標軸は、悩める日本が進むべき道に大いなる示唆を与えてくれるのではないか。
    ◇
 鬼澤忍訳、早川書房・各2100円/Alan Weisman 47年生まれ。米国のジャーナリスト。

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