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昭和の子供だ君たちも [著]坪内祐三

[評者]赤坂真理(作家)

[掲載]2014年03月16日

[ジャンル]社会

表紙画像

■時代の断層に傷ついた者たち

 「世代」をちゃんと定義した世代論を初めて読んだ気がする。物心つく六歳くらいから成人前後にその目に何を映し、どんな空気を吸ったか。それが世代感覚をつくる。
 最初の昭和生まれは、終戦の年に18歳前後。「昭和の子供たち」は、まず「戦争との距離」で世代をはかられることになる。そして、戦争の空位を埋めた「政治(共産主義)」との距離で。その指標が「趣味」「サブカル」に移り、平成へと至る。
 時代精神をあぶり出すにあたって、坪内祐三がおそらく本能的にとったアプローチは、「時代の断層に反応すること」だっただろう。たとえ1歳違いでも、あるいは同年の早生まれと遅生まれというだけでも、見える風景が全くちがってしまう切り口が、どんな時代にも存在する。そこを、当人たちの目や声を借りながらあぶり出す。「断層」をさぐり当てる様は、さながらミステリーのようなスリリングさである。
 「断層」には時に、最も傷ついた者たちがいる。時代に、信じたものに、裏切られた者たち。そしてなんの補償もされなかった者たち。たとえば予科練帰りは、同世代の中でも心情を共有できる者が極端に少ない。あるいは、はぐれ者たちの絆たる任侠(にんきょう)仁義にも裏切られた者たち。共産党の方針転換に最も傷つけられた者たち。彼らの絶望。自ら生命を絶った者もいるだろう。しかし、彼らの中にこそ、最も心を打たれる表現があったことに、私は不思議な救いを感じた。
 印象的な著者の叫びがある。“戦後システム”に代わる「新たなシステムを作りあげて行くことが私たち昭和生まれの使命だ(年金問題をはじめとする老後の心配などしている場合ではない)」
 『昭和の子供だ君たちも』は、安易な連帯感のタイトルではない。「君たちも『昭和の子供』なら、責任がある」。そう私は受け取った。
    ◇
 新潮社・1890円/つぼうち・ゆうぞう 58年生まれ。「東京人」編集部を経て執筆活動に。『靖国』など。


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