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戦乱の中の情報伝達―使者がつなぐ中世京都と在地 [著]酒井紀美

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年03月16日

[ジャンル]歴史 社会

表紙画像

■意識高い農民の姿うかがえる

 備中国の新見庄と京都の東寺は、荘園と領主の関係にあった。寛正2(1461)年に新見庄の使者が東寺を訪ねて、これまでの細川勝元の請負代官を追い払ったので、改めて代官を直接に送ってほしいとの書状を届ける。これからの10年間、両者の間で交わされた往復書状を分析、その情報伝達の内容を吟味したのが本書である。
 ここには「支配」と「被支配」の枠組みより、農民たちの意識がかなり高いことが窺(うかが)える。たとえば「京上夫」(荘園から京都に上る使者)の人数をめぐる対立では、「夫役負担が増大するのは、末代までの大儀」と農民は抵抗を続ける。この「末代まで」という意識が抵抗の核になっていて、自分たちの労苦を子孫代々にまでは味わわせまいと考えていたのである。
 京都の世情が悪化して応仁の乱に至るが、書状の往復は少なくなっても村々を結ぶネットワークで都の権力関係は地方にも正確に知られていたというから驚きだ。
    ◇
 吉川弘文館・1890円


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