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ヴァギナ [著]ナオミ・ウルフ

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)

[掲載]2014年04月13日

[ジャンル]人文 社会

表紙画像

■創造の源、個性豊かで神秘的

 アメリカのフェミニスト、ナオミ・ウルフの日本での新刊がずばり『ヴァギナ』。大胆、かつ簡潔なタイトルだ。
 本書の中で、ウルフは自分が患った骨盤神経の圧迫から話を始める。治療の過程で、彼女は医師から驚くべき事実を知る。骨盤神経にはヴァギナの様々な場所から伝達があり、脊髄(せきずい)から脳に届く。オーガズムはそこで生まれる。
 そしてなんと「同じような骨盤神経のもち主は二人といない」というのだ! 女性一人ずつそれぞれが、別な神経のネットワークを持つ、と。
 ウルフはここで「ヴァギナ」を医学用語より幅広く使う。膣口(ちつこう)を指すだけでは一人ずつ違うオーガズムの発生系統を限定してしまうからだ。神秘を覚える女性の身体の精妙さを単純化しないように。
 快感が脳に直結している以上、女性の心を脅かすことは大きく豊かな性的経験を阻害するともウルフは言う。創造の源であるヴァギナを解放することは、個々の人間の差異を肯定することでもある。
    ◇
 桃井緑美子訳、青土社・3456円

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