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異端の皇女と女房歌人 式子内親王たちの新古今集 [著]田渕句美子

[評者]三浦しをん(作家)

[掲載]2014年04月13日

[ジャンル]歴史 人文

表紙画像

■和歌で表現した魂の自由

 『百人一首』にも入っている式子内親王の和歌、「玉の緒よ絶えなば絶えね長らへば忍ぶることの弱りもぞする」は、「内親王自身の、秘めた恋心を歌ったもの」と解釈されることが多い。しかし実際は、「忍ぶ恋に苦しむ男性になりきって歌った和歌」なのだそうだ。
 式子内親王は、後鳥羽上皇の文学サロンの一員だった。そこには和歌の才能にあふれた人々が集い、互いに切磋琢磨(せっさたくま)していた。身分や性別に関係なく、歌の実力のみによって認められる世界があった。
 「創作物の内容=作者自身の経験や感情」という平板な思いこみが、本書を読むと見事に覆される。いまよりもずっと行動範囲が制限されていた中世初期の女性たちは、異性になりきってその心を歌い、まだ見ぬ風景のなかで羽ばたいていた。歌は、彼女たちの魂に自由をもたらす表現方法だったのだ。
 歌に生きた女性たちの、誇り高く自由な精神、熱く切実な思いを現代によみがえらせた良書だ。
    ◇
 角川選書・1944円


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