書評・最新書評

書庫を建てる 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト [著]松原隆一郎・堀部安嗣

[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)

[掲載]2014年04月20日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■守り継ぐ、先祖が生きた証しも

 狭い空間をいかにうまく使って大量の蔵書を収め、使い勝手の良い書斎を作るか。タイトルと副題から、そういった工夫を開陳する内容なのだと思っていた。
 冒頭から良い意味で裏切られた。施主であり著者の一人である松原隆一郎は、まず自分の家の歴史を丹念に綴(つづ)る。
 戦前に裸一貫から造船などの事業を次々と興し財を成した祖父から父親に継がれた生家は、阪神淡路大震災で全壊し、新築される。しかし父親の死によって、その家土地も相続問題で分断を余儀なくされる。
 祖父をはじめとする先祖が生きた証しが消えゆくなか、せめて仏壇だけは守り継ぎたい。先祖あっての施主と家屋と、その集合体である町並み。この三つの連なりを生かし、仏壇を擁した書庫づくりプロジェクトは始まるのだ。
 後半に繰り広げられる建築家堀部安嗣の手腕に舌を巻きつつ、すべての家屋それぞれに宿る、暮らしの軌跡に改めて思いを馳(は)せた。
    ◇
 新潮社・2052円



関連記事

ページトップへ戻る