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寝相 [著]滝口悠生

[評者]

[掲載]2014年04月27日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 ただ散歩したり、昔の仲間に会って話したり。一見ありふれた日常が、「私」と三人称の混在する語りや時間軸を巧みに操る著者のたくらみによって、実に新鮮に見えてくる。新潮新人賞を受賞した「楽器」ほか2編を所収したデビュー作。
 表題作は、放蕩(ほうとう)の末に余生を過ごす85歳の竹春と、孫娘なつめの同居生活を描く。竹春の波乱の半生や家族の歴史、2人の暮らしが、天井の木目の視点(!)などを交え、時系列に関係なく淡々とつづられる。
 一人の人間に確かに刻まれた時間を描写した、なつめが竹春の背中を拭く場面が印象的。過ぎ去った人々が時空を超え、竹春の前に集まる幻想的な終盤は、不思議な幸福感に満ちている。(新潮社・1944円)

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