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教育を家族だけに任せない―大学進学保障を保育の無償化から [著]大岡頼光

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2014年04月27日

[ジャンル]教育 人文

表紙画像

■興味深い奨学金めぐる論争

 知識社会化で大卒の労働者の重要性が増している。加えて少子高齢化が進む日本では、貧富に関わらず、幅広い層の若者に大学進学の機会を保障する必要がある。ところが、日本の財政支出は年金など高齢者に偏り、若者への「投資」が少ない。日本の公的教育支出の対GDP比は、主要国で最低水準だ。私的負担が重いため、所得水準で大学進学率に明確な格差がある。
 貧富の差で高等教育機会の均等化を損なわないためには、実は就学前教育が重要だというのが、本書の最大のメッセージだ。しかし興味深いのは、本人が卒業後に稼ぐ所得に連動して返済するローン給付奨学金導入をめぐるスウェーデンの論争だ。
 本人負担への転換で親からの独立を促し、低所得者対策だった奨学金に「人的資本投資」としての意味を与え、さらには親の資力調査を廃して普遍主義的な政策に転換することで、誰でも給付を受けられるようにすることが重要だとの指摘は、刮目(かつもく)に値する。
    ◇
 勁草書房・3024円

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